真っ白な雲と鉄の塊が滑空する江戸の青空。
穏やかな風が桜の枝を揺らし、はらりはらりと薄紅の花弁を散らす姿は儚くも美しい。
自然公園に何百とあるその姿は圧巻。
人はその下に集まり、季節の情緒を味わうのである。
・・・・・・・そのはずであるのに、今あたしの目の前の光景はまさに真逆。
美しく舞い散る桜の下におわすは、むさ苦しい殺気出す男共。
中には女子供や犬までも戦闘体勢に入っている。
何これ。何この殺伐とした空気。
手に持ったお弁当持ってそのまま回れ右したいのは、きっとあたしだけじゃないはずだ。
左を見れば幕吏真撰組御一行。
右を見れば万事屋銀ちゃん御一行。プラス近藤局長がストーカーしている噂の美女と巨大犬。
・・・・なにこの面子。
ああそう言えば、銀が花見しないかって昨日電話来たんだった。
真撰組の行事に強制参加だから行けねーとかい言って断ったけど、まさかここまでばったり遭遇なんてするとは思わなかったです。こんちは。
そして初っ端から空気が痛いです。
「今からでも遅くない!お妙さんっ俺と花見をしくちゃぶっ!!」
「おとと逝きやがれストーカーっ!!!」
前話ですでにボコ殴りにあってたってのに、それさえ忘れ去った真撰組のゴリラは美女に再び沈められた。
ストーカーと被害者の力量差が激しいとこんな下剋上が発生するんだね。勉強になったよ。悪いほうのね。
「俺たち退かしてーならと弁当寄越してもらおーか」
「山賊かテメーは!どっちもやらねーからとっとと失せろや天然パーマ!」
「山賊じゃありませんー。テメーの存在がこの上なく気にくわないだけですー!」
「あん!?俺だってテメーなんかとこうして顔つき合わせてんのも不快なんだよっ」
こっちはこっちで銀時と土方副長さんが脈絡なく喧嘩の売り買いを始めるわ・・・。
一部血祭り、一部同族嫌悪、周囲に殺気立つ野郎ども。
「つーかさあ、フツーに花見しよーよ」
周りがヒートアップするとテンション下がる悪癖持つあたしの独白は、結局誰の耳にも入らなかったようです。
時間の経過とともに雰囲気は険悪になるし、抜刀も遠くない未来チャンバラに変換するのも時間の問題だよ。
なんかもう、本当に急遽問題発生するよね。なんだろうねこの着火スピードは。
「待ちなせぇ!!!」
そんなあきらめムード全開のあたしに一筋の光。
振り向けば甘いマスクの特攻隊長がピコハン片手に立っていた。
・・・・・なんでピコハン?
「堅気の皆さんがまったりこいてる場でチャンバラたァ頂けねえや」
「そ、総悟・・・・」
「ここはひとつ、花見らしく決着付けましょーや!」
どうしよう。総悟がまともな事言ってカッコイイよ、なんか知らんけど。
そうかお前はこうして普通の事が言える子だったんだね。お母さん嬉しいよ。
・・で、だからなんでピコピコハンマー?
「第一回陣地争奪!叩いてかぶってジャンケンポン大会いいぃぃ!!」
『花見関係ねーじゃん!!!!』
皆一斉にブーイング。
それより総悟は持参したのかなそれ。やりたかったのかね。
二人以上いなくては成立しないこのゲーム。意外と淋しがり―――。
「おい勝手なモノローグ入れんなよ。ぶちぬくぞ」
―――という訳で開催された即席・花見席争奪戦。
総悟の提案がずれただけで、決着付けて席取り合戦するには結局みんな賛成。
でっかい茣蓙を敷いて、真ん中に置いたヘルメットとピコピコハンマーを挟むように六人が二手に分かれて向かい合う。
茣蓙の周りにはそれまで殺気立っていた男たちがやんやとはやし立てる。
戦闘フィールドは共有できるんだねあんた等は。
・・・・つーかこれ、お祭りっぽくね?お祭りだよね。桜の下の。
最早花見宴会だよね?え、あたしだけ?
真撰組側からは近藤局長、土方副長、沖田一番隊長の上司三段重ね。
万事屋側からは銀時、神楽、新八君・・と思いきやお姉さんのお妙さんが特別出場。
「えー、ではルールを説明します。勝敗は両陣営の代表三人で決めてもらいます」
「審判も公平を期して両陣営から新八君と俺、山崎が務めさせてもらいます」
一番まともな人が審判になったようです。
・・・にしてもなんだろうねこのドリームチームの様な濃さは。
方やゴリラとマヨラーとドS王子。
方や銀パとチャイナと未知数美女。
「主体が濃すぎて審判霞んでるよねこれ。どうする眼鏡くん、ジミー」
「さん、あんたが一番暴言吐いてんの気づこうか?」
新八君のツッコミが的確で新鮮だよ。
屯所じゃあ脅迫もどきのツッコミや人の傷抉るのばっかりだから、なんか君の大切さを再確認してしまったよ。
「・・・新八君、君はこのままでいてね。切実に・・・」
「いきなり何の話!?なにが哀愁漂う雰囲気に転換させたの!?」
あたしのシリアスな空気に突っ込む新八君の横で、山崎くんがスルースキルを行使して進行する。
「・・・・えーっと、ではこの勝負、勝った方はここで花見をする権利プラスお妙さんプラスさんプラス弁当を得る事が出来ます」
「山崎さんプラス多すぎて本来の趣旨が霞んでるんですけど!ってか内容増えてるんですけど!?」
「あ、いや、万事屋の旦那と副長がさん云々言ってたからなんとなく」
「なんとなくで人を景品にするのやめろ!どっちついてもあたしにはマイナスしか生み出さないんだけど?!」
前話で副長さんにぼこられたせいで言動に敏感になってるのか、勝手にルール追加した山崎くん。
君はもっとまともだと思ってたのにっ。
真撰組でも万事屋でも、結局あたしが酔っ払い(銀とか副長とか総悟とか局長とか隊士とか)介抱することになるんだからさあ!
・・・・あれ、もしかして負担少ない方って万事屋の方・・・?
・・・・・って結局雑用が常用って、あたしの存在って・・・・。
「まあ、そちらの紅一点はモテモテなのね」
「・・・・は?」
一人打ちひしがれているあたしに穏やかな声がかかる。
楚々とした笑顔が印象的な女性があたしの方を向いて声を掛けてくれた。
桜よりも濃い紅色の着物がよく似合う。高い所に結い上げた黒髪は彼女の面をすっきりと見せている。
・・・だがしかし、これを見てモテるに直結する貴女の視力には少々問題があると思うんですが。
「お名前は何と言うの?」
「え、あ・・西郷です」
「さんね。志村妙です。歳も近いみたいだし、仲良くしましょう?さん」
「あ、はい・・・お妙ちゃん」
なんか可笑しな空気になってきた。
殺伐とした空気が和らぎ、なんか女同士の友情フラグっぽいのが立ちそうな・・・。
でも、・・なんだろうあたしの本能的な勘が危険信号を発しているんだけれど・・・。
「ところでさん。貴女のお勤め先にいるゴリラ、どうにかして沈めてくれないかしら」
「え゛っ」
ところでの使い方違う!しかも明るい笑顔と声色で真逆の内容要求してきやがった!
つか、コレは友情フラグでも何でもない!デッドエンドに持ち込む気だよ!!
どうにもできない所にまで引きずり下ろす気だよ、新八姉!!
―――君のお姉さんなんでここまで追い込まれちゃってんの!?
―――ストーカーしてるあんたの上司に聞いてくださいよっ!!
「それで、どうなのかしら?私、本当に困っているの。出来るの?出来ないの?」
「・・・ご、ごめ、んなさい。なんか、ホント・・・ごめんなさい。すいません。許して・・・」
「あらあら。どうしてそんな泣きそうな追い込まれた顔しているの?そんなにゴリラの職場に嫌気が・・・?」
「「「「(あんただあんた)」」」」
鼻をスンと鳴らしてプルプル震えだしたあたしを見かねたのか、銀時の大きな手があたしの頭をガシガシかき回す。
それなりに距離があったはずだけど、いつの間に移動してきたんだとか、ものすごく憐れんだ目で見られていることとか、いまは些細なことだ。や、本当に。
心中でお妙ちゃんを突っ込んだ面子は推して知るべし。
・・・・・・なんだったんだろう、あのグラビティな超圧笑顔っ!
人の口から謝罪をオートに放出させる超高機能!
そしてそんな彼女をストーキングしているという近藤さんは一体どんな無礼をこれまで働いて来たんだ!?
「じゃ、じゃあ始めますよ。いいですか姉上?」
「ええ」
気を取り直して声を上げた新八のお蔭で、肩の力は抜けて周囲の下がり気味だったテンションは再び上昇した。
「行けェェ局長!!」「死ねェ副長!!」「誰だ今死ねっつったのは!切腹だコラァァ!」
ああ、なんかホント日常によくある光景だよ。全くこの野郎どもは。
「それでは一戦目!近藤局長vsお妙さん!!」
恐怖体験が抜けきらないあたしを余所に、山崎くんの号令で呼んだ名前に再びあたしの体は硬直した。
音にするなら「びくっ」である。
「姉上、無理しないでください。僕代わりますよ」
「いえ、私が行かないと意味がないの―――全て、終わらせてくるわ」
心配する新八君を余所にお妙ちゃんは何か言っている。
ぶるり。
・・・・・なんだろう、聞こえないはずなのに寒気がしたんだけど・・・。
腕組んで「手加減しませんよー」とか調子こいてる近藤さんに死相が見えた気がした。
――――果たして、あたしの予感は的中する。
「ハイ!!叩いてかぶってジャンケンポン!!」
乗り気な近藤の掛け声にジャンケンはお妙の勝ち。
素早くヘルメットをかぶり防御を完成させたゴリラの向いで、美女は流れるようにピコピコハンマーを手にした。
まるで凶器を掴むように、しっかりと。
・・・そして唱える、呪いの念仏。
「セーフ!!」
「セーフじゃない!逃げろ近藤さん!!」
「え?」
余裕顔の近藤さんに新八くんは鬼気迫る声を上げた。
しかし、もう遅い。
ストーカー被害者の鉄槌はすでにレベルMAXを突破。大気圏までもを貫かんとしていた。
「 天 魔 外 道 皆 仏 性 死 魔 三 障 成 道 来 魔 界 仏 界 同 如 理 一 相 平 等 ――― 」
「ちょ、お妙さん・・・?これ、・・もうヘルメット、かぶってるから・・ちょっと?!」
ドゴッ!!!
玩具のピコハンなら普通にピコピコ鳴るはずなのに・・・鈍器みたいな、あってはならない音がしたんですが・・。
一体何が楚々とした美女をあんな鬼女になるまでに追い込んだのか。
ストーカーって言ってもどんだけ・・・いや、考えたくない、なんか怖い。
ルール総無視したお妙ちゃんに隊士たちはさらに殺気立った。
「ルール関係ねーじゃん!!」
「局長になんてことしやがる!」
「このクソアマ!!」
すげーよこいつら。お妙ちゃんに向かって暴言とか、死ぬよあいつら死ぬよ。
数分前に彼女の怖さを実体験しているあたしは茣蓙の隅っこに移動してびくびくしているしかない。
「あ゛〜〜〜〜?やんのかコラ」
――――・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・、
『すんませんでしたっ!!!』
鬼の面相でメンチ切るお妙ちゃんに敵う勇者はいない。みんな例外なく速やかに土下座である。
目が「八つ裂きにすっぞゴラ。文句あるヤツァ出てこいや!!」って言ってたもん。
女王(というよりラスボス)の貫録を見せつけて、お妙ちゃんはそのままあたしのお弁当の蓋を開け、食べはじめてしまった。
―――まあ、豪華ね。頂いても?
―――どうぞ、献上いたします。
―――まあ、献上だなんて。さんどうしたの?
・・・・・・・もちろん、その事に口出す勇者はいません。だって怖いから。
「・・・・えーと、局長が戦闘不能になったので、一戦目は無効試合とさせていただきます」
「戦闘って言うか・・生存も危ぶまれてる気が・・」
「言ったら負けですさん。二戦目の人は最低限のルールは守ってくださいね」
達観組にいるせいかいつもより冷静な山崎くんに勇気づけられた気がした。
しかし悲しいかな。
彼が釘をさす前から試合は開始されている。
「フン!」
「はっ!」
ガッ ゴッ ドン ゴッ ドン ガッ ガッ
「お゛お゛お゛お゛お゛!もう始まってんぞ!」
「速ェェ!!ものすげぇ速ェェ!!」
「あまりの速さに二人ともメットとハンマー持ったままに見えるぞ!?」
神楽vs総悟
万事屋と真撰組双方の最凶カードである。
早すぎて手の動きが残像になりかけてるよ。叩いてかぶってジャンケンってここまで神速競うものだっけ?
そしてやっぱりピコピコ音がしないんだね。
きっとアレ玩具じゃないんだよ。きっとそうに違いない(自己暗示)。
「ほう、総悟と互角にやり合うたァ何者だ?あの娘。次だ」
「・・あーい・・・」
「奴ァ頭は空だが腕は真撰組最強を謳われる男だぜ」
「互角だあ?神楽に人が勝てると思ってんの?奴ァなあ、絶滅寸前の戦闘種族『夜兎』なんだぜェ?すごいんだぜ〜。ちゃん次ぃ」
「・・はいよ」
「あんだと?うちの総悟なんかなぁ・・・」
「オイ、ダサいから止めて!うちの父ちゃんパイロットって言ってる子供並にダサいよ!!ってかさんまで一体何してんの!!?」
「えっ?」
「「えっ?」じゃないよ!なんでこの人たち勝手に飲んでるのとか、あんたはあんたでお酌しちゃってんの!?」
そう、いつの間にやら試合見ていたあたしを銀時が引っ張って「勝負すっぞ酌しろ」と言われるまま酌をしていた。
雑用スキルはオートで発動中だった。
・・・・・・・・・・・どうしよう!
「新八くんっ・・・あたしもう駄目かもしれない!こんな、パシリの様な姿・・・あたし、もうっ・・・!」
「訳わかんないよ!?すでにもうカオスだから!ってか何?あんたも酔ってんの!!??」
「素面ですが何?文句あんの?」
「なんで逆ギレ!?」
自意識を損失しかけている所を新八君が突っ込んでくれたお蔭で、手にしていた酒瓶「鬼嫁」から解放された。
辛辣に切り返してきたあたしに、眼鏡の下に怒りマークが見えるけど。ま、いいか。ぱっつあんだし。
「よし!じゃあ次はテキーラだ!!」
「上等だコラ!!」
「この人たちはこの人たちで飲み比べ対決始めちゃってるし・・・・」
「あっちはあっちでフツーに喧嘩してるよね」
「げ」
さっきまで座ってたのにいつの間にか、格闘を始めている神楽ちゃんと総悟。
ピコハンはどこぞに転がっていて、お互いメットはかぶったまま殴り合ってる。
周囲が戦闘する二人を見てどよめく。
「ちょ、アレちょっと見て!」
「二人とも明らかにメットかぶったままじゃねーか!ハンマーないし!!」
「なんかジャンケンもしてねーぞ!!」
うがあああ!!
ガキっ ぼかっ ドカッ
「ただの殴り合いじゃねーか!!」
「だからルール守れって言ってんだろーがアァァ!!」
二戦目の選手は戦線離脱・・・というか、別の勝負に移行した模様。
もうぐだぐだである。
とうとう場外で取っ組み合いを始めてしまうお子様ペア。
ツッコミのボルテージを上げる新八君だけど、あたしはこの崩壊する宴席にテンションだだ下がり。
「―――しょうがない!最後の決着で決めるしかない!銀さっ・・・」
「「オ゛エ゛エ゛エエェ」」
まさかここまで酷いとは予想外だ。
戦闘フィールドが今やただの馬鹿騒ぎだよ。
テレビに映る様な迷惑モザイク人間の集団代表が飲み比べでおう吐とか最低だよ。
「オイィィ!!何やってんだ!?コレじゃあ勝負つかねーよ!!!」
「ちょっと!いつも言ってんでしょーが!吐く前に「吐く」って言えって!!」
「だからなんでさんずれたコト言ってんですか!?オカンかあんたは!!?」
新八君のツッコミは置いといても、いつも介抱している側の身になれよこの馬鹿二人は!
飲み比べで共倒れした銀と副長さんの醜態にしんぱっつぁんのフラストレーションは上がる一方。
そのうち頭の血管ブッチリ逝きそうなカオスが広がってるよ。一体何これ。どこの世界?
「・・・・あーなんかもう、」
そして馬鹿馬鹿しすぎてなんだかこのまま普通にお花見していいんじゃない?とか思ったりする。
そう思いついてからのあたしの行動は早い。
諸悪の根源を叩き潰さんと、唸った両腕は迷いなく二人の男の飲んでいた空のコップに手を掛けた。
「ヒック・・心配すんな俺ァまだやれる」
「上等だコラ」
「このまま普通にやってもつまらねえ。ここはどうだ、真剣で『斬ってかわしてジャンケンポン』にしねーか!?」
「上等だコラ」
顔色最悪の二人は戦意ばかりはあるようで、ふらふらの体で睨み合っている。
それでも酔っ払いは酔っ払いである。
銀時はよく分からない勝負を提案するわ、土方に至っては「上等」しか言えないくらい思考回路が退行している。
・・・・・・もう、駄目じゃね?いろんな意味で。
「・・・・おーい。んなふらふらしてて周りに迷惑かけんな馬鹿ども」
「・・・さん?」
「どいてろ、怪我ァするぜ」
「上等だコラ」
「怪我してんのはテメーらの頭だ馬鹿ども。コレ飲んで頭冷やせや馬鹿」
「上等だコラ」
「テメーさっきから「上等」しか言ってねーじゃねーか。俺が言うのもなんだけど大丈夫か?」
「上等だコラ」
「・・・いいから飲めや!!この馬鹿二人!!!」
ガパンッ!!
「「ガババっ!!??」」
大丈夫じゃないよ。駄目だよもう手遅れだから!・・・言ったところで通じるかは分からんけど。だって酔っ払いだもの。
あたしはふらふらしながら真剣持つ野郎どもの口にコップを押し付けた。・・・というか無理矢理突っ込んだ。
コップに入っていた液体を強制的に銀と副長さんの口腔に押し込んだあたし。
なんか絵的にシュールだ。
傍目に一部始終見ていたお妙ちゃんが機嫌よさげに拍手しているあたり余計じゃね?
―――まあすごいわ。
―――(すごいのはソレを見て機嫌上昇しているあんただよ)
「がほ!何しやが・・げほっ!?」
「ごはっ・・んだ!?このクソ不味い酒は!?」
「酒じゃねーよ。誰が酔っ払いに酒提供するかボケ」
唐突に起きた事に男二人がむせながらうずくまり、その傍らに仁王立ちの女。すなわちあたし。
気分的にはBGMに勝利のゴングが聞こえた気がした。カンカンカン!
「なんだ?何が起きた?」
「なんかさんがあの銀髪と副長KOしたぞ?」
「姐さんなんか清々しい顔してっぞ」
周囲が騒然となる中、被害者二名が根性であたしを睨みあげて来た。
「コラ・・てめ、何しやがった・・!?」
「なんか、頭ぼーっとすんですけど・・・」
「そりゃ、さっき飲んだのが睡眠作用の薬湯だからでしょーが」
もう立つ気力の無いのか、お互いウトウトして瞼を一生懸命開こうと目をしょぼしょぼさせている。
すげーな腐っても体力馬鹿なだけあって、普通は酒飲んだ上に薬飲んだら一発KOなのにまだ抵抗してるよ。
なんでこういう時だけど根性発揮してんだ。
「まあ、みんなの平和的な花見の為だ。あんた等が永眠・・じゃねーや安眠してくれるとなんか平和だし・・・。・・あ、皆さんは真似しないでください。危険だから☆」
「「ざけんな、このクソアマっ!!!」」
日ごろの憂さを晴らしたあたしのシニカルな笑みに、撃沈寸前の銀と副長さんはその一言を最後にぐっすりとお眠りになりました。ちーん、合掌。
目が覚めた時には多分もう宴会も終わってるんだろうな。
・・・そういえば、副長さんが自分で企画した花見に本人途中退場(強制)とかなんだか、世の中無情だなあ。
止め刺したのあたしだけどね!
そうして邪魔者排除したあたしは皆からこっそり祭り上げられている事を、あたしは知らない。
よーし、お花見再開といきましょうか!!
嬢の勝利で幕閉じました。別名強制終了。
銀時と土方ファンの方すいませんでしたorz
前話で山崎くんがボコ殴りにあったってのに今回はほとんどスルーですね。
可哀想に(人ごと)
結局この二人は勝手に飲み比べて、勝手に飲み潰れるんだから嬢が強制退去させてもいいんでない?
とか、適当に考えたカオスの産物がここに出来あがりました。
なんか、いろいろ勝手にすみません・・・。